はじめに
2025 年5 ⽉、⽂部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(以下:教員養成部会)において「教育職員免許法施⾏規則第66 条の6(以下:66条の6)」の見直しの必要性が示されてから、1年が経過しました。以下に、2026年4月現在の議論の動向ならびに大体連が行ってきたアクションとその経緯について報告をいたします。

最新情報:学校種別作業部会の検討を経た「二次まとめ」
2026年4月30日に開催された教員養成部会の教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ(以下:部会ワーキンググループ)の第7回会議において、学校種別作業部会の検討結果が「二次まとめ」として報告されました。その中で、新たな教職課程を再構築する上での「体育」の必要性について、次のように示されました。

施行規則66条の6に定める「体育」については、同条に定める「体育」として維持をしないこととし、特に、以下の学校種については、以下の観点で引き続き検討する。
・小学校:各教科の専門的事項及び指導法を一体的に学習する10教科の中の体育として学習。併せて教師としての適応力・回復力・自己管理能力(教師の健康)との関係については、引き続き検討。
・中学校・高等学校:教師としての適応力・回復力・自己管理能力(教師の健康)との関係については、引き続き検討。
【資料2】今後の教職課程や教員免許制度の在り方について(二次まとめ)(たたき台) (P3)

このように、部会ワーキンググループに対する各作業部会からの回答として、66条の6の見直しに際して教職課程内に「体育」という科目は維持をしない方針が示されました。しかしながら、上記の様に「教師としての適応力・回復力・自己管理能力」の育成と体育が持つ身体的学びとの関係については継続すべき検討課題とされました。この検討の継続に関しては、2つの校種作業部会の議論の過程で、大体連が中心となり「教職課程における『体育』の教育的機能の再構成に関する要望書 ― 校種横断的『ウェルビーイング基盤科目』(仮称)の創設提案 ―」を作成し、日本スポーツ体育健康科学学術連合、日本体育・スポーツ・健康学会、日本体力医学会との連名で検討を要請したことが一定程度、反映されたものと言えます。さらに大体連は、日本体育・スポーツ・健康学会における本課題に対するワーキンググループ(以下:体育学会ワーキンググループ)と協力し、先の要望書に「近年の大学教養体育の授業実践に関する学術的成果のまとめ」ならびに「ウェルビーイング基盤科目のシラバス検討案」を加え、部会ワーキンググループの参考資料として再度提示しました。
4/30の会議では、本課題にまで議論は展開しませんでしたが、5月以降の議論が注視されます。なお、今年度の夏頃までに部会ワーキンググループの議論がまとまり、その後に教員養成部会が答申に向け、改革の内容を固める見通しとなります。
以下に、要望書の概要とこれまでの経緯をまとめました。

要望書の内容
要望書は、身体性や健康教育に関する学びが、「教育基本法における教育の理念および教員養成の基盤」、「教師としての適応力・回復力・自己管理能力の育成」などの観点から、教員を目指す全ての学生の学びとして位置づけられる必要があり、従来型の「体育」を教員養成のための身体・健康教育演習として再構成する「ウェルビーイング基盤科目(仮称)」の創設を検討課題とすることを求めたものです。
さらに、本議論が部会ワーキンググループに引き継がれることを受け、「近年の大学教養体育の授業実践に関する学術的成果のまとめ」ならびに「ウェルビーイング基盤科目のシラバス検討案」を補足資料として加え、再提出しました。この中で、学術的成果については、大学体育の授業実践におけるねらいのパラダイムシフトとして、
①:社会人基礎力を育成する教育介入とその成果
②:生涯を生き抜く「ライフスキル」を育む教育実践
③:自律的学習者と折れない心を育む「自己調整学習」と「レジリエンス」の育成
④:科学的根拠に基づく「行動変容」と「生涯スポーツ習慣」の確立
⑤:「主観的恩恵」の可視化と学習効果を最大化する授業設計
⑥:コロナ禍に見出された大学教養体育の価値と教育的効果:単なる「実技」を超えた人間形成
などの観点を示し、教員養成に繋がる教育実践事例を紹介しています。また、ウェルビーイング基盤科目のシラバスについて、体育学会ワーキンググループによる検討案として複数の専門領域からの授業内容案を統合した形をまとめました。本案は今後さらに検討が重ねられる予定です。
教職課程における体育に関する再検討の要望書

小学校、中学校・高等学校作業部会での議論の概要(2026年2月~3月)
要望書の作成には以下の経緯がありました。教職課程内に体育を位置づけるか否かの議論は、2026年2月、部会ワーキンググループによって設置された「幼児教育」「特別支援教育」「養護教諭・栄養教諭」「小学校」「中学校・高等学校」の5つの作業部会によって検討が進められることとなりました。大体連は文部科学省初等中等教育局教育職員政策課(以下:事務局)とミーティングを重ね、体育の必要性を主張するとともに、諸会議における議論の情報を得ながら、教員養成課程に体育を位置づける方策を探ってきました。そして、「小学校」「中学校・高等学校」の作業部会による体育の必要性に関する議論が大きなポイントとなる点を事務局と共有し、まず、1回目の各作業部会において、教職課程における体育科目の実態調査のまとめである「教職課程における体育科目に関する調査報告と提言」を参考資料として提示しました。本資料では、教職科目としての体育の実態と現場の教員が考える意義を示すとともに、教職課程への体育科⽬の位置づけを検討するための提⾔を示しました。
しかしながら、中学校・高等学校作業部会では、教員に必要な健康教育を学ぶことになる事項等について今後検討が必要としながらも、体育を現行通りの一般教養科目としては位置付ける必要はない、との意見が大勢を占めました(2月25日)。さらに小学校作業部会でも、教科教育法として体育は重要であるが、現状の大学の体育であれば不要との意見が出されました。一方、教師としての適応力・回復力・自己管理能力の育成やコミュニケーション能力等の育成につながる身体性の教育の必要性を指摘する発言がありました(2月26日)。
新たな教職課程(小・中・高等学校)では、①強み専門性に係る内容(20単位)、②教科指導等に関する科目(16~18単位)、③教育及び幼児、児童又は生徒の理解に関する科目(12~13単位)、④教育実習・教職実践実習(5~7単位)の枠組みが固められ、③④の科目は「各科目に含めることが必要な事項」を網羅する形で再編成される方針となっています(資料:【資料2】今後の教職課程や教員免許制度の在り方について(二次まとめ)(たたき台) P19-21)。この中に教養科目である「体育」をそのまま位置付けることは難しい課題であり、各作業部会が体育の位置づけに否定的な意見を示すことは想定できていました。ただ、他の66条の6科目である「日本国憲法」「数理、データ活用及び人工知能に関する科目又は情報機器の操作」は④の科目内の「含めることが必要な事項」に重ねる方針となっていました(※外国語コミュニケーションについては、教職課程内に位置付け方針となっています)。体育もこれらの事項にある「教職の意義及び教員の役割・職務内容(チーム学校運営への対応を含む。)」「教師としての適応力・回復力・自己管理能力の育成」「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解及び基礎的環境の整備・合理的配慮の提供」「幼児、児童及び生徒の個々の多様な特性の理解と包摂」などに通ずる学びを提供するものであり、従来の体育を再構成する形で教員養成に貢献できることを主張する試案がありました。
こうした経緯を経て、2回目の作業部会に向けて、大体連と体育学会ワーキンググループが協力し「ウェルビーイング基盤科目(仮称)」の創設を軸とした要望書を作成し、4団体の了解のもと事務局に提出し、再度検討課題として議題に挙げてもらう手続きを行いました(3月17日)。その結果、「体育」の位置づけでの維持はしないものの、教員としての能力育成との関係から部会ワーキンググループで継続して検討することが確認されました(中学・高等学校:3月24日、小学校:3月30日)。そしてさらに、大体連と体育学会ワーキンググループは、要望書の実現可能性を補足するための資料として、「近年の大学教養体育の授業実践に関する学術的成果のまとめ」ならびに「ウェルビーイング基盤科目のシラバス検討案」を加え、再度事務局に提出をし(4月22日)、部会ワーキンググループでの継続審議のための参考資料を更新し、4月30日の会議を迎えました。
(文責:専務理事・村山、2026/05/07)

記録:66条の6の見直し議論の経緯など(2025年5月~2026年1月)
大体連のアクション
・2025年7⽉に全国⼤学体育連合(以下:大体連)は、66 条の6 にある「体育」について、教員免許取得に必要な科目として現状の2 単位を維持すべきであることを理事会声明として発出した。
「教育職員免許法施行規則第66条の6」の見直しに関する全国大学体育連合理事会声明 | 公益社団法人全国大学体育連合
・2025年11月、大体連ではこの議論を深めるため、教職課程における体育科目の実態についてアンケート調査を実施し、2026年2月、この報告書(調査結果と提言)を公開した。さらに、本報告書を文部科学省事務局を通じて、教員養成部会の教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループの作業部会(小学校作業部会、中学校・高等学校作業部会)に参考資料として提示した。
教職課程における体育科目に関する調査報告と提言 | 公益社団法人全国大学体育連合
・日本体育・スポーツ・健康学会主催の「緊急公開シンポジウム2025 教員養成における一般教養科目としての体育の役割と課題を考える」に共催し、シンポジストとして北徹朗理事(武蔵野美術大学)が「教職課程における大学体育の意義と課題」を報告した。
https://taiiku-gakkai.or.jp/wp-content/uploads/2025/11/2025.12.20_Sympo.pdf

中教審の審議の経緯
・2025年5月の教員養成部会において、検討事項の中に「免許法施行規則第66条の6については、各大学が創意工夫を生かした柔軟な教育課程を実現するという観点から、当該条項の廃止も含めて見直しを図るべきではないか」が加えられる(第148回教員養成部会における委員の発言を受けて)。
第149回教員養成部会(5/7)資料1, P5 【資料1】諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項と基本的な考え方(案)(社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方)

・「免許法施⾏規則第66 条の6については、各⼤学が創意⼯夫を⽣かした柔軟な教育課程を実現するという観点から、教員免許取得に⾄る学びを総合的に再構築する中で当該条項の廃⽌も含めて⾒直しを図るべきではないか。」
第151回教員養成部会(6/27)資料1-1, P6 【資料1ー1】諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項と基本的な考え方(案)(社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方)

・「教育職員免許法施行規則第66条の6については、各大学等が創意工夫を生かした柔軟な教育課程を実現するという観点から、教員免許取得に至る学びを総合的に再構築する中で当該条項の見直しを図るべきではないか。」
第154回教員養成部会(9/1)資料1-1, P10 【資料1ー1】多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する論点整理(案)

・「学校種ごとに検討すべき課題、求められる専門性が異なることから、今後詳細な議論を進める際には、学校種で分けて検討を進めるべきではないか。特に、小学校以上の学校種との連携や保育士養成との連携を踏まえた改革が必要な幼稚園教諭、教職課程における必要単位数等の考え方がそのほかの職種と異なる特別支援学校教諭、養護教諭、栄養教諭等について、教職課程全 体の議論に加えて、個別にどのような改革方策が必要か、更なる検討が必要ではないか。」
第155回教員養成部会(9/17)資料1-1, P7 【資料1ー1】多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する論点整理(案)

・教員養成部会のもとに、教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ(以下「ワーキンググループ」という。)が設置された。
第155回教員養成部会(9/17)資料3-1 【資料3ー1】中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会 教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ等の設置について

・「~66条の6に定める科目と介護等体験については、教師になるに当たって全員が身に付けるべき内容であるならば教職課程の中に位置付けるべき方向性のものとして統合することが重要ではないかという中で~体育についても、教職課程の中に含める形で再構造化できないか、各作業部会で検討すべきではないか。」
第3回教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ(12/5)議事録 教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ(第3回)議事録:文部科学省
【資料1】今後の教職課程や教員免許制度の在り方について(中間まとめ)たたき台

・教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループのもとに、幼児教育作業部会、特別支援教育作業部会、養護教諭・ 栄養教諭作業部会及び小学校作業部会、中学校・高等学校作業部会を設置し、課題検討を行うことを決定。
第4回教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ(12/18)参考資料2-1 【参考資料2ー1】中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ等の設置について(改正案)